コラム
2022年10月1日からスタートする接骨院の明細書発行義務化について
2022.8.1
10/1 からスタートする明細書の発行義務化について、わかりやすく解説します。義務化といっても、適用されるのは条件を満たす施術所のみです。
まずは、自院が義務化の対象かどうか明確にしましょう。
発行義務化となる条件
今回、明細書の発行義務化が適用になる施術所は、以下の“2 つの条件を満たす施術所のみ”です。
条件その1 明細書発行機能のあるレセコンを使用している施術所
使用しているレセプトコンピュータに明細書発行機能が備わっているかどうかが条件の一つ目です。もちろん、NOAH には明細書発行機能が備わっていますので、NOAH をご利用の施術所はこの条件を満たすことになります。
現状、NOAH には日ごとの明細書を発行することはできますが、月間の明細書を発行することができません。こちらは施行される 10/1 までに機能を追加する予定です。
また、オプションのレシートプリンタをご利用いただいている場合も、要件を満たした明細書が出力されるよう仕様を変更します。
そもそも明細書とは?
明細書とは「領収額の内訳」が記載されているものです。現在発行が義務化されている領収証は、施術合計額と一部負担金の金額のみが記載されていますが、この施術合計額の内訳が記載されているのもが明細書です。
施術合計額 640 円に対し、640 円のみを記載したものが領収証、その内訳(後療料:505 円、罨法料:105 円、電療料:30 円)まで記載したものが領収書です。この内訳まで記載した上で、施術合計額と一部負担金、領収額を記載したものが「領収証兼明細書」になります。
つまり、明細書を発行するには施術合計額の内訳を計算できなければいけません。これを行うにはレセコンの力が必要不可欠。手計算でもできなくはないですが、相当の手間と知識が必要です。このような理由で、条件その1が「明細書発行機能のあるレセコン」なのです。
条件その2 常勤職員が3人以上である施術所
もう一つの条件が“常勤職員 3 名以上であること”です。なんともあいまいな表現で判断に迷うところですが、厚労省からの疑義解釈では以下のように示されています。
「常勤職員」とは、原則として各施術所で作成する就業規則において定められた勤務時間
※の全てを勤務する者を指すものである。なお、柔道整復師に限らず、事務職員等も含むものである。
※ 就業規則を作成していない場合は、各施術所の一般的な労働者の労働契約における勤務時間
「常時 3 人体制を維持している施術所」は、そう多くないと思われます。NOAH ユーザーの皆様は、[条件その2]の常勤職員 3 名以上かどうかが、義務化か否かの判断基準です。
厚労省の示した常勤職員の定義を確認し、自院が当てはまるかどうかをご判断ください。
常勤の定義
“常勤”とはどういう定義で考えれば良いのか、判断に迷うと思います。しかし、厚労省は常勤の定義について、上記以外に特に基準を示していません。厚労省も特に定義を設けていないということになるので、各々で判断せざるを得ないということになります。
一つの指標として、法定労働時間上限(1 日 8 時間、1 週 40 時間)で勤務している従業員を常勤とし、同等の基準で勤務されている従業員を1とカウント、それ以外(例えば、週 4勤務や午前中のみ勤務など)を非常勤としてカウントするという考え方ができます。
常勤 3 名とは、営業時間内に常に 3 人の人員がいるという基準ではありません。お昼休憩で数時間 2 人体制の時間がある=常勤 3 名体制ではない、という考え方は間違いです。同様に、週 5 日以上 8 時間勤務する従業員が 3 名いて、早出、遅出でトータル 10 時間の営業時間を交代でシフト管理している、などの場合は、状況次第では院内スタッフが 1〜2 名体制になる時間がありますが、法定労働時間程度の勤務をする従業員が 3 名いるので、常勤は 3 人とカウントすべきと考えられます。
発行義務の施術所と義務ではない施術所の違い
発行義務の施術所
常勤職員が 3 名以上いる場合は、明細書の発行が義務になります。10 月 1 日以降は、正当な理由がない限り“無償”で明細書を発行してください。正当な理由とは、患者から不要の申し出があった場合です。
なお、NOAH から出力されるのは、前述の「領収証兼明細書」です。こちらを発行いただければ領収証の発行義務も満たすことになります。
発行義務のない施術所
3 名以上の常勤職員がいない場合は、明細書発行義務はありません。その場合は、これまで通り患者様から発行依頼があった場合に、“有償”で明細書を発行してください。注意しなければいけないのは、明細書の発行義務はなくても領収証の発行義務はあるということです。
義務に則り、これまで通り患者様に領収証をお渡ししてください。もちろん、義務がない場合でも明細書を発行しても問題ありません。領収書に代わって領収書兼明細書を発行しても OK です。
ちなみに…
「明細書の発行義務はなくても、領収書の発行義務はある」ので、義務とならない施術所も、これまで通り領収証は発行しなければなりません。
領収証には施術合計額を記す必要がありますが、そもそも施術合計額は、それを構成している内訳の和です。つまり、内訳が判らないと正しい領収証は発行できないことになります。
今回の義務化の議論の中に、施術所内での負担増を主張する声がありました。確かに手書きで対応しているところは、金額を項目ごとに書かなければいけなくなるので負担増だとは思いますが、レセコンを利用している施術所では、出力する用紙の形式が変わるだけなので、領収証も明細書も負担は変わりません。明細書発行より領収証発行の方が楽ではありません。
明細書発行体制加算の算定条件
考え方としてまず気を付けなければいけないのは、“明細書発行義務=明細書発行体制加算ではない”ということです。明細書発行義務の対象施術所が明細書を発行した場合に算定できるもの、ではなく、義務対象になっていない施術所でも、加算の算定条件を満たせば算定することができます。
まずは、明細書発行体制加算の条件をまとめます。
条件その1 患者から一部負担金を受けるときは明細書を無償で交付する施術所であること
明細書発行義務のない施術所の場合は、患者の求めに応じて“有償”で明細書を発行します。
この場合は、発行体制加算は算定できません。算定が可能なのは、あくまで正当な理由がない限り“無償”で明細書を発行した場合になります。
「つまり明細書発行義務のある施術所じゃないか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。ポイントは、発行義務のない施術所でも正当な理由がない限り“無償”で明細書を発行していれば算定することができる、という点です。これが、義務ではない施術所が明細書を無償発行するメリットになります。
条件その2 明細書を無償で交付する旨を施術所内に掲示すること
[条件その1]に該当する施術所であることを文章で院内に掲示することが 2 つ目の条件です。もちろん、患者様に向けてのご案内ですので、受付窓口付近に掲示するのが望ましいです。バックヤードに掲示、では意味がありません。
掲示する案内資料は、厚生労働省が参考例を示しています。10/1 の施行日までに、会員の皆様用に加工し、ジャパンいちばなどからダウンロードいただけるよう準備します。体制加算を算定される施術所は、こちらを出力して院内に掲示してください。
条件その3 明細書を無償で交付する施術所である旨を予め地方厚生(⽀)局⻑に届け出ること
明細書発行体制加算を算定するには、[条件その1]に該当する施術所であることを管轄の地方厚生局に届け出る必要があります。10/1 から算定する場合は、前月の 9 月末までに所定の用紙を管轄の地方厚生局に提出します。以降は届出を提出した翌月から、算定が可能になります。
厚生労働省は、各厚生局に届出のあった施術所の①施術所名②届出日③所在地④電話番号⑤施術管理者名⑥施術管理者登録記号番号を、届出のあった月の翌月 10 日までに厚生労働省ホームページに掲載します。各保険者は、ここで算定要件を満たす施術所であるかどうかを確認することになります。⽀給申請書上に発行体制加算が算定されているが、厚労省ホームページで施術所情報が見当たらない場合は、届出がなされていない施術所とみなされ返戻の対象になると考えられます。つまり、届出なしで体制加算を算定することはできない、ということになります。
会員の皆様の届出に関しては、10/1 の施行開始月については、当会で取りまとめの上、地方厚生局へ提出する予定です。方法については、追ってご案内します。
ちなみに…
登録の届出があるということは、取り止めの届出もあります。常勤 3 名で体制加算算定の条件を満たしていた施術所が、退職者が出て常勤 2 名になった場合、その施術所は明細書の発行義務の条件を満たさなくなり発行義務はなくなります。施術所側が、以降は無償発行しないと判断する場合は、厚生局に取り止めの届出を行う必要があります。
もちろん、そのまま無償提供を続け、継続して体制加算を算定していくという選択肢もあります。無償提供を続ける限りは、施術所の体制に変更があったとしても、改めて届出を行う必要はありません。
明細書発行体制加算の算定ルール
上記 3 つの条件をすべて満たした場合、明細書発行体制加算が算定可能になります。今度は、算定可能となった場合の算定ルールをまとめます。
ルールその1 月に 1 回のみ算定可能
領収証と同じく、明細書も原則患者様から一部負担金を徴収するごとに発行する必要があります。患者様から月 1 回の発行を求められた場合のみ、月 1 回でまとめたものの提出でも可とされていますが、あくまで“患者様から求められた場合”です。施術所側が勝手に月 1回発行をルールとすることは認められません。必ず来院ごとに発行してください。
そして、ここがポイントですが、来院ごとに都度発行した場合でも、算定できるのは月に 1回です。来院日ごとに明細書を発行する場合は、最終来院日でなければならないというような条件はありませんので、来院日のいずれかで算定していただくことになります。もちろん、月 2 回以上の算定とならないよう NOAH 側で制御をかけます。
患者様の求めにより月 1 回発行とする場合、算定日はおのずと発行日になると思います。
月途中で月間の明細書は発行できないので、その月の最終来院日か、もしくは翌月の最初の来院日に前月分をお渡しする形になります。
前述の通り、体制加算は発行日に算定すべきものですので、翌月最初の来院日に発行したのであれば、前月分の明細書であってもこの日に算定することになります。もし、同じ月の月末最終来院日に当月分の明細書を発行した場合、すでにこの月の発行加算は算定してしまっているので、追加でもう 1 回分を算定することはできません。月単位で明細書をお渡しする場合は、発行するタイミングに気を付ける必要があります。
ちなみに…
少しうがった考え方になるかもしれませんが、発行体制加算は読んで字のごとく明細書を発行したことに対する加算であり、患者様にお渡しすることは加算条件ではありません。
月末に発行だけしておき、ここで発行加算を算定(もちろん発行日は月の最終来院日)。翌月患者様が来院した際にお渡しするという運用でも特段問題はないと考えられます。もし、翌月以降患者様が来院されず、発行しておいた明細書をお渡しできなかったとしても、“発行する”という要件を満たしているので加算は可能(取り下げる必要はない)とも言えます。
ルールその2 算定額は 1 回 13 円
明細書発行加算を算定した場合、⽀給申請書の施術合計額に 13 円が加算されます。施術合計額に含まれる、ということは、「それに対する 1 割〜3 割の一部負担金も発生する」ということになります。“無償”提供のはずなのに、実際は無償ではないという矛盾が生じますが、これについては、厚労省、業界側、保険者側ともに問題としない考えです。
あくまで、義務化の対象とならない施術所が明細書を発行する場合の“有償”発行に対しての“無償”発行という意味と解釈してください。
明細書の発行パターン
以上をもとに、10/1 以降考えられる施術所のパターンをまとめます。全て NOAH を利用
している施術所であることが前提です。大半は①か⑤のパターンになると思われます。
①常勤 3 名以上。厚生局に届出して明細書を無償発行する。体制加算は算定する。
発行義務がある施術所のオーソドックスなパターンです。
②常勤 3 名以上。厚生局に届出して明細書を無償発行する。体制加算は算定しない。
体制加算を算定しないのであれば届出は不要と考えがちですが、これは誤りです。厚生局へは、「明細書を無償発行する旨」を届け出るのであり、体制加算を算定することを届け出るのではありません。従って、常勤 3 名以上であれば明細書無償発行の義務を有するので届出は必要です。届出をするのであれば、体制加算は算定すべきです。
③常勤 2 名以下。厚生局に届出して明細書を無償発行する。体制加算は算定する。
常勤が 2 名以下でも、明細書を無償発行し、その旨を厚生局に届け出れば体制加算は算定可能です。施術所で対応可能であれば選択肢となり得るパターンです。
④常勤 2 名以下。厚生局に届出して明細書を無償発行する。体制加算は算定しない。
②と同様のパターンです。義務化の対象でなくとも無償発行をするのであれば、体制加算の算定有無にかかわらず厚生局への届出が必要です。届出をするのであれば、体制加算は算定すべきです。
⑤常勤 2 名以下。届出しないし明細書も無償発行しない。体制加算は算定しない。
発行義務のない施術所のオーソドックスなパターンです。
ちなみに…
●常勤 3 名以上。厚生局へ届出しないし明細書も無償発行しない。体制加算は算定しない
●常勤 3 名以上。厚生局へ届出しないし明細書も無償発行しない。体制加算は算定する
この 2 パターンはあり得ません。常勤 3 名以上なので「明細書を発行しない」の選択肢はありません。届出もしていないのに体制加算を算定するという下のパターンは、一番あり得ないパターンです。
●常勤 3 名以上。厚生局に届出しないが明細書は無償発行する。体制加算は算定しない
●常勤 2 名以下。厚生局に届出しないが明細書は無償発行する。体制加算は算定しない
体制加算の算定有無にかかわらず、明細書を無償発行する場合は厚生局への届出が必要です。この 2 パターンもあり得ません。
まとめ
明細書発行義務化については、常勤の定義などあいまいなものが多く、各々の判断にゆだねられている部分が多くなっています。定義を明確化できない事情があるものと推測されますが、厚労省としては、できるだけ前向きな捉え方をしてほしいという意図が見て取れます。
どうにか常勤 3 名の定義を外れ、義務化を避ける方向で考えるのではなく、発行体制をとれるのであれば、法に則って義務を果たしていくという考え方で、今回の明細書発行義務化を捉えてください。
NOAH の仕様や厚生局への届出方法については、詳細が決まり次第ご案内していきます。
ご不明な点があれば、お気軽にお問合せください。